ブログ版水野義則Times(アーカイブ)

愛知県尾張旭市の水野義則です。市議会議員を4期13年、市長を2期6年9ヶ月務めさせていただきました。地方自治、政治に携わらせていただいておよそ20年、現職でなくなった今だからこそ発信できることがあると思います。「私が言う」ことで、多くの人が何かを考え、何かを感じていただければと思い、引き続き発信していきたいと思います。

法律

選挙の収支報告

統一地方選後半戦が終わり、多くの元候補者がほっとする頃のゴールデンウィークですが、多くの元候補者がこの時期に領収書と格闘していることはあまり知られていません。選挙後は、当落に関わらず、収支報告書を出納責任者が領収書の写しを添付して選挙管理委員会に提出する必要があります。自治体によって差があるのかどうか分かりません(確か2週間以内)が、今回の尾張旭市議会議員一般選挙の場合、1回目の提出期限は5/9となっています。この間に、支払いを済ませ、領収書を揃え、報告書を記入し、領収書をコピーする、という作業をしなければなりません。これが、思いのほか大変なのです。

会計責任者がしっかりしていて、報告書まで作成してもらえる候補者はとても幸せです。多くの方にとっては、選挙の終わり=活動の終わり、というイメージが強いので、なかなか事後処理までお付き合いしていただける方は貴重で、候補者の多くは自分で処理しているのが現実です。領収書がちゃんと揃っていて管理されていれば良いのですが、選挙期間中は混乱しており「あれれ?」というケースも少なくありませんが、現実問題として選挙期間中に候補者がそこまで管理できるものではありません。

この制度は、選挙に法で決められた金額以上のお金をかけないようチェックするためのものですが、選挙が終わって2週間で報告、というのはかなり高いハードルです。選挙にかかった経費を全て報告する必要がありますので、領収書の束とにらめっこが続きます。

これ、何だっけ?

ということも少なくありません。

この選挙運動費用の支出制限額は、選挙人名簿登録者数と議員定数によって計算され、今回の尾張旭市議会議員選挙においては

3,736,700円

となります。収支報告書がこんな金額に達する人はそういないと思いますが、これは選挙にかかった経費であり、後援会活動などは含まれませんし、例えば事務所を3ヶ月借りても計上するのは7日分ですので、実際に後援会の立ち上げから全て考えますと、結構なお金が立候補にかかっている人が多いと思います。

電気・水道・ガスなど、1ヶ月遅れで請求・支払がくるものもあり、そういう場合は第2回、第3回と報告を続けていく必要があります。選挙は、準備や選挙期間中の活動も大変ですが、終わった後も結構大変なのです。

制限されるあいさつ行為

尾張旭市議会議員一般選挙が4月24日に執行され、4期目の当選をさせていただくことができました。事前のあいさつ回りをほとんどせず、選挙期間中の電話による支援依頼もしない中で、1,490票での5番目での当選と、いずれもこれまで4回の選挙の中で一番良い結果をいただきました。少し、選挙のあり方が変わったような印象があります。

本来であれば、ここでお礼のあいさつを述べるべきところでありますが、公職選挙法第178条により、以下の行為が禁止されています。

有権者に対して、当選または落選に関しあいさつをする目的で
・有権者に対して戸別訪問すること
・文書、図画を頒布し、または掲示すること
 ただし、自筆の信書および有権者からもらった祝辞・見舞に対する返信を除く
・新聞紙、雑誌などを利用すること
・放送設備を利用して放送すること
・当選祝賀会その他の集会を開催すること
・自動車を連ね、または隊伍を組んで往来するなど、気勢をあげること
・当選したお礼に当選人の氏名、または政党、政治団体の名称を言い歩くこと

これらには期限が設けられておらず、またインターネット上のものは「文書、図画」と現状はみなされるため、ここでお礼のあいさつを述べることができません。私も選挙終了後の4日間、選挙期間中に立たせていただいた駅に立ちましたが、お礼は言わずに、朝のあいさつをさせていただきました。以前、当選決定後に街宣車でお礼を言って回った方の話を聞いたことがありますが、おそらくは違反とみなされるでしょう。

以上のような制約により、皆様にはっきり申し上げられなく、申し訳ない気がいたしますが、今後4年間の活動でお返しをしていく、ということでご理解をいただきたいと思います。

名簿を集める

選挙と言えばやはり「名簿」がものを言います。公選ハガキを出すにも、電話でお願いするにも、戸別訪問するにも、名簿の存在と精度が大切になってきます。世の中には色々な名簿がありますが、亡くなってしまったり、引っ越してしまったり、区画整理等で町名が変わってしまったりしているケースもありますので、その「鮮度」は重要です。公選ハガキは、市議選では2000枚、政令市や都道府県議・首長の選挙では8000枚を出すことができますので、どの程度有効に届くか、という点については、陣営がどれだけ頑張って事前に確認作業やダブリチェックをしたか、が重要になってきます。まあ、届いたら票になるかというと、そういうものでもありませんが、「宛先不明」とかで返ってくると悲しいものがあります。

とはいえ、最近はこの「名簿」というものに過敏になっている人が多いです。よく「どこからうちの情報を得たのですか?」と聞かれますが、なかなか答えに困ります。割と軽い気持ちでご紹介していただくのですが、先方に了解を取っていないと「誰?」という話になりますが、かといってそれが原因でその方々の中が悪くなっても困りますので。

一方で、過剰ともいえる反応が返ってくることもあります。「どこで電話番号を知ったんだ!」とお叱りをいただいたことがありましたが、電話帳に電話番号が載っている方でしたので、「電話帳で調べました」と答えますと、「そんなつもりで電話帳に載せたわけではない!」と怒られたことがあります。都合の良いときは調べてもらって構わないけど、都合の悪いときは調べないでくれ、というのはなかなか通る話ではありません。個人情報保護法が過剰に誤解されている例だと思います。

個人情報保護法では、名簿を集める際には、その目的や使用方法を明示する必要がある、とされています。ただ、政治活動については除外されていますので、後援会入会として集めた名簿は、実際にはどう使われるかわからない、ということになります。ただ、まっとうな政治家なら、個人情報保護法を国民がどう解釈しているか、ということも肌で感じていますので、その名簿を適当に使うということもないでしょうけど。

電話帳や同窓会名簿など、一般的な名簿については、集めるときに「選挙での使用不可」などと明記して集めていないでしょうから、やはりいろいろな場面で「そんな使われ方は…」という話も出るでしょう。政治活動だから何でもアリ、ではないですが、難しい話だと思います。まあ、最近はそういう名簿自体が少なくなってきました。個人のつながりで、名簿として2000件もの名前を集めるのはなかなか至難の業であります。

先日、尾張旭市内でも、某小学校のPTAの集まりで、ある新人候補予定者のリーフレットを渡して、とにかく名前を書いてくれ、と言っていた人があったようです。まあ、後援会活動なのでそうなってしまうのでしょうけど、学校側が場所や機会を提供したと取られると、これは結構やっかいです。そういう場合は、本来は主催者の許可が必要なケースだと思いますが、この場合はおそらく許可はされないでしょう。確かに、そうまでしないと名簿が集めにくいのは確かですが、そうまでして無理やり集めた名簿にどれほどの意味があるのか、疑問に思います。逆に反発する人もいますし、家に帰って家族に怒られた、なんて話もよく聞きます。我々政治家も注意が必要ですね。

選挙の新聞広告

選挙期間中、候補者は新聞に2回選挙広告を掲載することができます。主に、地域版の周りを埋め尽くしている選挙広告ですが、知事選や県議会議員選挙ならともかく、統一選後半の市長・市議・町議選挙となれば、その数は膨大になり、時には「ん?」という場所に掲載されてしまったりします。

もちろん、掲載の費用は候補者持ちで、取り次ぐ代理店によって値段も少し違うようですが、たまたま手元にある代理店のチラシによりますと、

ヨコ9.6cm タテ2段(6.9cm)  約7万円
ヨコ6.4cm タテ2段(6.9cm)  約5万円
ヨコ4.8cm タテ2段(6.9cm)  約3.5万円

くらいかかります。大きい方が目立ちますが、2回出すとそれなりにお金もかかります。原稿までちゃんと作ろうとしますと、やはり結構な金額になります。

候補者が頭を悩ますのが、これを何曜日に掲載してもらうか?ということです。簡単に言えば、数が少ないときに掲載されれば目立ちます。しかし、できれば投票日に近い方で掲載したい、ということです。そうなると、水曜日か、木曜日か?というような駆け引きが行われます。何曜日の選挙広告が少ないか、という点に着目するとまた一つ新聞を見る楽しみが増えるかもしれません。

ただ、皆さんはこの新聞の選挙広告を投票行動の参考にしていらっしゃるのでしょうか?あまり大した内容が載っていないものが多いような気がしますが、いかがでしょうか?

連呼って?

岐阜の県議会議員選挙で、東日本大震災に配慮して、選挙カーの使用時間の短縮と、「連呼」の自粛を申し合わせたものの、「連呼」の定義で悩んでいる、という内容の新聞記事を目にしました。何とも不毛な感じのする、それでいて真面目な悩みでもあるようです。

「連」呼なので、字面上の意味を考えれば、「連続して呼ぶこと」だと思います。2回続けたらNG、というのが一般的な解釈でしょう。総務省によれば、特に回数の決めはないとのことで、「短時間に同一内容の短い言葉を連続して繰り返し呼称すること」らしいので、名前に限らず「同じ言葉をつづけたらNG」ということになります。逆に、毎回違う言葉にすればOK、ということです。これを自粛することに、どれほどの意味があったのか、今となっては候補者本人が疑問に思っているかもしれません。

こうなりますと「もっと政策や公約を」というご意見が出てきます。しかし、走行中に許されているのは「連呼」であり、連呼が「短いフレーズを短時間で」と解釈されていますので、演説のようなことを行うことはできません。せいぜい「高齢者福祉の充実に努めます」とか「○○の削減に取り組ます」程度になってしまいます。本当に、政策や公約を訴えるのであれば、車を停車し、街頭演説の標旗を提示する必要があります。

そんな事情もあり、尾張旭市議会では連呼についての申し合わせをしませんでした。「スピーカーの音量控えめに」という形にしました。これは岐阜県議会議員選挙のような状況になることが想像されたからであります。

やはり、こんなお金がかかり、聞いている方も騒音にしか聞こえないような選挙の方法は変えていくべきです。ですが、今は法律上こうした制限があることも、有権者の皆様には知っておいていただきたいと思います。

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