イギリスがEU離脱で混乱していますが、メイ首相のリーダーシップに疑問を呈し、辞職を迫るような動きもあるようです。私は報道で見ているだけですが、本当に無責任だなあ、と思うことがあります。あの国民投票の結果を受けてだと、誰がやってもこうなった気がしますし、最初から一貫して「国民投票の結果を尊重し、やり直しはしない」と言っているメイ首相は立派だと思います。そもそも、こうなることが分かっていたからだれもキャメロン首相の後をやりたがらなかったわけで、火中の栗を拾われたわけですから。負担金は払いたくないし移民もいらないけど、人の移動の自由と関税なしはそのままで、などという自分のことしか考えていない都合の良い論理が通るはずないですし、通ったらほとんどの国がEUから離脱することでしょう。

先日の18歳選挙権の関係でやらせていただいた「主権者教育」の中でもこのことに触れましたが、要は民意の問い方に問題があったのだと思います。どちらも都合の良いことしか言わなかった、その結果がEU離脱が多数なのだと思います。誰だって負担金は払いたくないし、移民に仕事をとられるのも嫌でしょう。しかし、それとは別にデメリットもあることを伝えないから、そうだそうだ、となるわけです。もう一回国民投票やって逆の結果が出たら、どちらの国民投票結果が有効か?という議論が起こるだけでしょう。意味は無いですし、それくらいの覚悟でやらないとダメですよね。結果が気に入らないから勝つまでやる、なんて国民投票の意味を考えたらおかしな話です。


日本に目を向けてみますと、憲法改正で国民投票という話が出ていますが、各地域では住民投票が実施されています。沖縄県では県民投票が実施され、辺野古基地設置に関して「反対」という意志が示されました。「これが沖縄県民の意志だ」と言われていますが、どういう意志なのか、という点については注意が必要だと私は思います。

この県民投票は「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否」が問われたものです。つまり「普天間飛行場の代替施設のために辺野古を埋立てすることに反対」という意志を示した、ということになります。決して、普天間飛行場か辺野古基地かどちらがいいか?ということを問うたわけではありません。仮にそれが問われたのであれば、多くの沖縄県の人が投票に行かなかったでしょうし、そこに「どちらでもない」という選択肢があれば、ほとんどの方がそれを選ばれたのではないかと思います。結局、これは聞き方の問題であり、辺野古が好きか嫌いか、みたいになってしまっている面があります。沖縄県民の意志はきっと「普天間飛行場も辺野古基地も嫌だ」であり、もっと言えば「沖縄県に米軍関連施設は要らない」なのだと思います。まあ、国防の観点からそういう逃げ場の無くなるような住民投票はしないのだと思いますが。

もう一つ、大阪では一度住民投票で出た「大阪都構想はNO」という民意をひっくり返すための選挙が行われています。しかも、同じ人が再選されて任期が短くなることを避けるため、大阪府知事と大阪市長が逆の選挙に立候補して4年任期を得ようという、前代未聞のやり方で選挙になっています。ある維新の会関係者が「都構想は公約であり、公約を守るためにありとあらゆる手段を取るのは当然のこと」と豪語しているのをみましたが、これは全くの詭弁だと思います。立候補時に都構想「だけ」を公約にしていたのであれば、そう言えるかもしれませんが、きっとそんなことはないでしょう。それ以外の大阪府のこと、大阪市のことも公約したはずです。それらの公約はどうでもいい、と言っているに等しいですよね。だから、私利私欲のためだ、というそしりも受けてしまうわけです。もう一度是非を問う、と言うのであれば、単に出直し選挙に立候補すればいいだけの話で、入れ替えることの説明がつきません。まさに「党ありき」という感じがします。