9/10のブログ記事で、議会の一般質問の内容で平子北地内市有地のことを記述したところ、いくつかコメントをいただきました。そちらで返信すると長くなりそうなので、こちらで一つの記事として記述させていただきます。

まずは「そもそも平子北地内市有地って?」という方もおられると思いますので、そういう方にはこちらを一通りご覧いただきたいと思います。

平子北地内市有地の利活用

この市有地につきましては、これまでも多くの市民の方から「○○を造って欲しい」「△△に使わせて欲しい」など多種多様なご意見をいただいており、また市内の団体等の代表による懇談会を開催し構想案をまとめたりもしましたが、現時点で最終的な方向性は定まっていません。議会でも再三、その利活用について質問がされています。

hirako


そこで昨年度、有識者や専門家にヒアリングを実施し、11のコンセプトを具体的なイメージで可視化した

平子町北地内市有地活用方法検討報告書
平子町北地内市有地活用方法検討報告書イメージ図

を作成いたしました。現在は、この報告書を多くの方に見ていただき、自分の中のイメージを膨らませていただき、好き嫌いやこうした方が良いのでは、というようなご意見やご提案があればお寄せいただいている段階です。

なぜこうした報告書・イメージ図を作成したのか?ということですが、

・「叩き台がなければ議論できない」という声が多くあった
・「野球場を6面」とか「ディズニーランドくらいの遊園地」のような物理的に不可能な提案が多くあった

という理由で、より具体的で現実的なものをお示しする必要性を感じたからです。叩き台がなければ議論できない、というのも少し残念ですが、ただ単に叩くだけでなく、より現実な提案をお願いしたいところです。


そういう状況を前提として、9/10の議会の一般質問では、この場所に国が提唱する「生涯活躍のまち」を作ったらどうか、という質問が出ました。いわゆる都会の介護難民を受け入れて新たなコミュニティを作るものですが、これが市民の将来不安を解消することに繋がる、というものです。尾張旭市民だけが対象になるわけではない、住所は尾張旭市でも全然違う場所で新しいコミュニティに入ることが将来不安解消になるか疑問、交通の便が良いとは言えない、などの理由で私は懐疑的な考えも持っていますが、隣に旭労災病院があり一つの選択肢であることは否定はしません。

しかし、昨日の質問では、「宅地化すれば3億円で買った土地が135億円の資産に化ける」ということを述べられ「これをやらない手はない。計画を作れば愛知県も認めてくれる」ということを言われました。現在は市街化調整区域ですので、何らか住居のようなものを建てようと思えば、一般的には市街化区域に編入する必要があります。そうすると、土地の価値が上がる、ということなのですが、これが名古屋市との契約に反する部分があると思われる、というのが9/10付のブログ記事で述べたことです。

これに対して「契約時に名古屋市との約束があるのか?」という質問がありますが、それは名古屋市会の議事録に

◎河野総務局総務課長 今回の土地取引に当たりましては、今、仮契約を結ばせていただいておりますけれども、その中で尾張旭市さんは公用または公共用の用途に供するものとするというふうにされておりまして、仮にそれ以外の用途、つまり今言いました公用、公共用指定用途と言ってますが、指定用途を変更するときは、あらかじめ名古屋市と協議してくださいと、協議するものとするという条項を入れさせていただいております。

とある通り、公用あるいは公共用として自用する、用途変更する場合は協議する、という条項が含まれています。それ以外に合意事項というものがありますが、これは土地になにか汚染物質が埋まっていた場合は、など尾張旭市側からの内容になっています。ですので、「古い議事録に配慮している(内部資料ではなく公式文書だと思いますが…)」のではなく「契約条項に配慮している」ことになります。

そして、「尾張旭市が買った土地の用途についてとやかく言われる筋合いはない」というのは、やはり自治体同士の契約であり、ある部分信用取引のような部分がありますので、条項を無視するような無茶なことはできないと考えます。「協議すればいいんだろ?」というご意見もありますが、協議は協議であって連絡や報告とは違うので、拒否されれば落としどころを探る必要がありますし、最悪裁判のようなことに発展することも考えられます。この後の質問で、「名古屋市とのパイプや信頼関係の構築を」という質問がされたことを考えれば、協議結果を無視して強行する、というのも難しいと思われます。


ここで、平成24年9月の名古屋市会の本会議・委員会の議事録を見てみたいと思います。

◆伊神委員 具体的に考えていらっしゃらないということだけど、これ実際本当に何ができるかというと、大したものはできないと思うんだよね。
 それで、これは尾張旭市さんが買うことになったわけだけども、これ確かに市街化調整区域というのは、ここにあるように、尾張旭市さんが、なかなか使い勝手が悪いんで、区画整理やるか、それとも何らかの市街化調整区域を外してもらうようなことを申請すれば、これ一応できるわけだわな。そうすると、本当につくるものがなかったら、尾張旭市さんがそれを考えたとしたら、これは名古屋市との契約不履行ということになるんだけども、その不履行に対して、罰則規定とか、そういうことは名古屋市と尾張旭市の中に決めることはできるの。

と明確に「契約不履行」という言葉を使っておられます。これに対しては、土地区画整理ならできるが、公用・公共用に使用されると聞いている、というような答弁をしておられます。そして、例の条項のことにも触れられています。そして

◆伊神委員 結局、協議するということは、協議があって拒否することはできないということだわね。ということは、いずれどうやっても建てるものがないわと議会が言ったと、これ買っちゃったもの、どうするんだといったときに、協議の中で、区画整理もあり、これもあり、あれもありとやってみると、10年たつかたたぬかのうちに減歩引いても坪20万円ぐらいになるわけやな。こういうことを本当に簡単にやっていいもんかと、僕、非常に疑問に思うわけね。
 そこで、ちょっとお尋ねするんだけど、これ本当に利用方法がなかったのか、名古屋市として。これ、歴史見させてもらうと、貴重な財産ですよ。何か本当に、野外生活鍛錬所やいうて、軍事野営場なんて出てくるぐらい長いこと持ってきた大変貴重な財産ですよね。これを、今言うように、どうなるかわからぬようなところに、財政がと言ったところで、申しわけないけど、3億円ばかり入ってくるだけ。それで、この貴重な財産を売っちゃっていいのかということを僕思うわけね。そういう形が起きる可能性があるわけよ。開発される可能性があるわけよ。
 それで、本当にこれを有効活用しようとしたのか、その検討はどんなことをされたのか、ちょっと教えてください。

まさに協議を拒否できない前提ですが「土地ころがしするつもりじゃないよね?」ということを聞いておられます。そして、名古屋市にとっては3億円は大した金額ではないことが伺えます。その程度で貴重な土地を手放して良いのか?ということを言われています。その後、仮契約まで締結してしまっているのだから、今さら破棄できないじゃないか、というようなやり取りもあります。

結果的に、「団として重大な決意」というような発言もありましたが、以下の2点を要望として付して可決されています。

・公用または公共の用途に供するという売買契約書第11条第1項の規定を遵守するよう、引き続き尾張旭市に要請すること
・尾張旭市において当該土地をスポーツ施設を初めとする市民利用施設に供する場合には、名古屋市民の利用が可能となるよう尾張旭市に要請すること

2点目は私も「どうかな?」と思う部分はありますが、名古屋市会でこれだけのやり取りがなされたことは重い事実であると思っています。もちろん、条項上は協議をすれば良いことになっていますが、一方的な通告のような形は難しいと考えています。そして、これらのやり取りから、名古屋市としてはすんなり宅地化の協議にokを出せないことも想像に難くないところです。

生涯活躍のまち作りをしようとすれば、この協議は避けて通れません。ある程度話が進み、目処が立った段階で協議した折に、「これだと尾張旭市さんは儲けが出るじゃないか」という指摘が出た可能性は高いですが、そういう段階になる前に、公の場で「3億円が135億円に化ける」というようなやり取りをしてしまっては、その道はさらに険しくなったと感じています。もっとも、15haの内平らな部分は5ha程度ですので、かなりの造成をするとなればかなりの予算が必要となりますので、丸儲けとはならないのも事実ですが。

いずれにしても、こういう条件、状況の中で購入した土地です。3億円という価格も、そこにある建物の解体等は購入側でする前提で、更地の価格から解体費用を差し引いたような形になっているがゆえの価格でもあります。国の1兆円使って、土地の価格跳ね上がってウハウハ、というような単純な話ではありません。