何人かの方から「あの新聞記事を読んだか?」というお声がけをいただきました。実は、少し前の某新聞の夕刊の投書欄に、市長は名古屋市との合併を望む住民の声に耳を傾けよ、という趣旨の記事が掲載をされました。私は、この欄はいつも見るようにしていますが、なぜかこの日の分は見ていませんでしたが、私に話をしてこられる方は「何だあの失礼な記事は!」と怒っておられるようでした。

さて、確かに平成の大合併の時に、市民アンケートを実施したところ、合併先の希望として一番多かったのは名古屋市でした。ただ、そもそもアンケートの回収率が確か6%くらいということで、そもそも尾張旭市民は合併に対する意識が薄い、合併に対する機運が高まっていない、というのが行政の見解でした。これは、当時の行政の見解でありますが、私は、議員であった当時から合併反対派でした。当時は、名古屋市に隣接する自治体からは、名古屋市に対するアプローチがありましたが、名古屋市としては1つ乗ると全て乗らなければならなくなることもあり、任意協議会すら設置されなかったと記憶しています。だから、北名古屋市や清須市のように、別の合併の選択をした自治体もありました。

記事では、警察署、裁判所、税務署、保健所がないこと、警察署がないので署員が来るまでに時間がかかること、あさぴー号が17時台までで不便なこと、が書かれています。だから合併すべし、とは書いてありませんが、記事全体の内容からするとそういうことと読み取れます。

さて、名古屋市と合併したら、まずこうした県や国の出先機関は設置されるのでしょうか?私は逆だと思います。合併は基本的に合理化や効率化を目的に実施するものです。名古屋市は15万人くらいを1つの区の目安としているようですので、仮に尾張旭市が名古屋市に編入合併したとしても、尾張旭区になることはないと思われます。守山区の一部になるか、守山区を分けてそこに編入するか、他の周辺自治体と一緒に別の区になるか、いろいろ選択肢はありますが、今のままなら守山区編入が可能性が高いと思います。そうしたら、まず警察署を設置する理由はなくなります。区内に2つの警察署がある区はありませんから。保健所も、瀬戸保健所管轄から守山保健所管轄に変わるかもしれませんが、この財政難の折に増やす必要もありません。税務署もしかりですが、こちらは名古屋北税務署の管轄になるかもしれません。裁判所も、簡易裁判所だと思いますが、瀬戸簡易裁判所から名古屋簡易裁判所の管轄になるのでしょう。「合併すると役所が遠くなる」というのはよく聞く話ですが、今ここで合併して「ああ、便利になった」というものは無いとは言いませんが少ないと思います。今、守山署管轄なので免許の書き換えのベースが平針運転免許試験場であるのに似ています。だから瀬戸署で書き換えをしている人も多いのではないでしょうか。合併すれば、今の尾張旭市の市域内に出先機関が設置される、ということは期待できないことだと思います。もしかしたら、市役所だって区役所に統合して廃止、という可能性もあります。図書館や体育館は、守山区には新しく立派なのができましたので、そっちを使って、ということで廃止されるかもしれません。そうして効率化を図るのが合併の基本的な考え方だと思います。

では交通網はどうでしょうか。名古屋市になったんだから、地下鉄も名古屋市営バスも来る、というのは本当でしょうか。今、守山区は区政50周年です。つまり、守山市が名古屋市守山区になって、50年が経過して今の状態です。地下鉄は通っていないです。バスは、小幡や大森はともかく、志段味地区はあの状態です。

記事では「私の周りでは名古屋市との合併を望む声が圧倒的」となっています。「名鉄バスが廃止になり」ともありますので、恐らくは市内の南部地域の方なのだと想像されます。市役所なんか行かない、名鉄電車なんて乗らない、藤が丘に出る、という方なのかもしれません。そういう方から、本地ヶ丘住宅の人は名古屋市だからと敬老パスがあり、自分たちはほぼ同じ場所に住んでいていも尾張旭市だからと200円取られる、納得できない、という声はよくいただきます。あさぴー号を藤が丘まで乗り入れてとか、あさぴー号なら100円だから、差額の100円を市で払ってとか、そんな声もたくさんいただいています。そう考えますと、投書された方の周りの方々が合併を望む理由は

敬老パスが買える

が一番強いのかな、という気もします。私が合併に反対していたのは、文化とか伝統とか、そういうものが大なり小なり消えていくのが合併だからです。名古屋まつりと市民祭の関係を考えると、おそらく両方のお祭りを今までどおりやるということにはならないでしょう。もちろん、市長も含めた市の職員や議員は大幅に減ります。しかし、そこが減ってサービスが上がることはまずありません。もちろん、合併協議の中で、あるサービスが100円と200円だったら、じゃあどっちにしよう、100円にしようか、という議論はあり、負担が減る可能性はありますが、それは本当に一部の仔細なことであり、全体的にはあれがなくなる、あれが統合される、という話の方が大きいと思います。尾張旭市だから、棒の手とかざい踊りとか打ち囃子の保存に力を入れてきましたが、はたしてそれが合併後も続くかというと難しいと思います。

ということで、敬老パスが買える、という理由では合併を考えていくことはできないと思っています。名古屋市内の保育園や幼稚園に通う権利ができる(競争率は高いですが)とか、道路の延伸がとか、そういう話はあると思いますが、尾張名古屋共和国の絡みで、合併という枠組みにこだわらず何かできることはないか、という協議は今やっています。もちろん、住民の意見は聞いています。これまで300を超えるご意見をe-対話や便り対話でいただいていますが、名古屋市と合併すべし、というご意見は記憶にありません。敬老パスを買えるようにして、というのは数通あったと思います。少なくとも「圧倒的」という印象はありません。今後もご意見は聴いていきます。

ただ、記事の書き方かもしれませんが、あたかも私が「機運が高まっていない」と発言したかのように読める内容になっているのは大変残念です。