議員年金制度の廃止が決まり、それに関する法案も示されました。廃止の理由は、国民からの批判が多かったから、というよりは、今のままでは6月に市議会議員・町議会議員の方の共済会が破たん状態、つまり現職議員の掛け金を退職議員への年金給付が上回っているのですが、その分を積立金でもカバーできなくなるから、という理由の方が大きいです。このような状態に陥った理由は、市町村合併が進み掛け金を納める議員の数が大幅に減ったこと、合併の影響分を面倒みると言っていた国が一部しか見なかったこと、などもありますが、そもそも

制度設計に無理があった

というのが大きいと思います。実は、議員年金を廃止、と言っても、すぐにきれいさっぱり無くなる訳ではなく、現在給付を受けているOBの方には、そのまま支給(一部、高額な方のみ減額)されますし、廃止時に権利を有している現職議員(3期12年以上納めた方)は、80%の一時金か、現行制度での年金受給かを選択できることになっています。個人的には、現職議員に年金受給の道を残すのには反対なのですが、とはいえ全員が一時金ということになると、一時的に莫大なお金が必要となることも事実で、積立金の無い共済会としては支払い能力がありませんので、国が支払うということになります。そう考えると、支払いが薄く長く延びる部分があった方が良い面もあります。これがすべて終わるのは60年後くらいだと言われていますが、トータルで見れば現行制度を維持するよりは、国民の負担が少なくて済むと思われます。

それでこの「国が支払う」分ですが、実際は自治体に相応の負担がかかってきます。尾張旭市で1億円くらい、これまでの共済掛金が2千万円にも満たない額でしたので、一気に跳ね上がる計算になります。これに反発して「何で自治体が払わないといけないんだ」と支払い拒否を宣言した首長もあります。これも難しい話で、自治体は共済掛金を14%分(議員は16%)負担していたので、今後何十年・何百年それを支払うことを考えると、一時的に多額の負担をしても、トータルでは少なく済むはずです。しかし、国の施策のツケを回されることには抵抗があるのも仕方ありません。しかし、国の負担と言っても、結局は国民の負担であることに変わりがありません。

私は個人的には以前から廃止派でした。すぐにでも廃止して欲しい、と言ってきました。しかし、廃止するのにもお金が必要だよ、そのお金はどこから出てくるの?ということも言い続けてきました。あるフォーラムの中で質問した時、あるパネラーは「議員からすると、月々引かれる共済掛金が引かれなくなるので、手取りが増える。この分の半分でも回せたら」とお答えになりました。具体的な提案をされた、という意味では評価します。ただ、それは半額になったけど掛け金が続いていることにもなり、制度的にも矛盾を感じます。

一般的に、「廃止」と言うときれいさっぱりなくなることをイメージすると思います。この場合、掛けている方は次から掛金無し、受給している方は次から支給無し、共済会で働いている人は明日から仕事無し、という形になります。関係しない人は「それで良いじゃないか」とおっしゃるかもしれません。しかし、問題は大きく2つあります。1つは財産権の問題です。受給決定した方は、そこで裁定が終わっている、ということになります。それを無しにすることは、憲法上の財産権の侵害になる、という考えがあります。減額ですら難しいと言われ、JALがOBの同意を得られなかったと似ています。これは憲法の解釈の問題になりますので、おそらく支給停止となれば全国で訴訟が起こります。それを受けるだけの力が国にあるか、ということが問題になります。もう1つは、未受給者が掛けてきた掛金を「無し」にしても良いのか、という問題です。任意加入の保険のようなものならまだしも、法律で定められ報酬から源泉徴収されてきた掛金を、破たんしたからといってゼロクリアできるのか、という問題です。これも無かったことにした途端、全国で返還請求が起こると思います。中には「利子は負けてやる。全額返せ」と言っている人もいます。国会議員の例にならった「80%」という数字が妥当なのかどうか、が問われます。

私は、個人的には「ごめん、今までの掛け金はなかったことにして」と言われても良いと思っていました。もっと前から準備して、現職にもOBにも粘り強く話をして同意を取っていく、そういうこまめさがあれば、早めに停止して傷口を広げないようにすることもできたのではないか、と思っています。しかし、もう破たんギリギリのところにきてしまい、そんな余裕も無くなってしまいました。これは国会が、地方議員年金制度について後回しにしてきたツケだと思います。

一時金を選択した場合、平成23年の6月以降の最初の退職時にそれが支払われます。この4月に選挙が行われるところは、その次の選挙、通常ですと平成27年4月ということになります。既に震災の影響でそのままいけるかどうか、という話も出ている中、6月に選挙が行われる自治体の議員で一時金を選択した人が、まずそこそこの掛け金返還分を手にすることになります。神戸市なんかが6月選挙と聞いたきがしますし、県内では刈谷市が7月、小牧市や稲沢市が9月に改選です。一時金を選択すると「被災地に寄付しろ」という声が出るかもしれません。そうなると、今後4年間で制度が変わってしまうかもしれません。

議員にとって、悩ましい選択となることは確かです。