元市長の、わたいう

愛知県尾張旭市の水野義則です。市議会議員を4期13年、市長を2期6年9ヶ月務めさせていただきました。地方自治、政治に携わらせていただいておよそ20年、現職でなくなった今だからこそ発信できることがあると思います。「私が言う」ことで、多くの人が何かを考え、何かを感じていただければと思い、引き続き発信していきたいと思います。

無投票当選と選挙費用

全国で統一地方選挙の前半戦が始まっていますが、マスコミやネット記事は無投票当選批判一色といった感じですね。立候補者数よりも無投票当選者数をメインで報道するなんて、市民の政治不信・政治家不信を増幅させようという意図が見え隠れして、下衆な感じがしますね。無投票だと馴れ合いになるとか、チェック機能が低下するとか、全く根拠のない言いがかりも残念な感じです。政治とか選挙とかって、そういうものでは決して無いですし、そう思うなら一度その立場になってみたら分かると思います。地方の議会では成り手不足で定員割れを起こしているところもありますから、そこで立候補してみたらいいと思います。県議会議員選挙なんて、住民票無くても立候補できますし。無投票と言われていた瀬戸選挙区が一転して選挙戦になったのは、尾張旭市在住の医師が立候補したからです。自分には投票できませんが、無投票を阻止することは十分に可能です。河村市長風に言えば「そんなに言うならあんたが出りゃええがね」というところでしょうか。マスコミも市民の負の感情を不必要に煽るだけじゃなくて、市民に選択肢を与える努力もしてみてはいかがでしょうか?

私が市長2期目に無投票当選となった時に、一番言われたのは「儲かったね」ということでした。平たく言うと「選挙にお金使わなくなって儲けものだね」という意味です。実際には、選挙期間が7日から1日になったからといって、選挙にかかる費用が1/7になるわけではないんですけどね。

そもそも、選挙にいくらかかるか?というのは、その候補者がどういう選挙をやるのかとか、選挙エリアの広さ、立候補者数などによって変わってきます。尾張旭市ですと、市議選は最低100万円くらいと言われていますが、中には数十万円しかかけない方もおられます。市長選では1000~1500万円と言われていましたが、私はとてもそこまでかける余裕はなかったのでそれよりかなり少ない金額でした。「選挙にかかる費用」というと多くの人は賄賂とか、そういう裏のお金を想像しがちですが、実際には事務所費用と印刷費が大きいです。今回の市議会議員選挙からマニフェストの配布が一部解禁となりましたので、以前より選挙費用がかかる候補者が多いと想像されます。

選挙にかかる費用と、選挙後に選挙管理委員会に提出する収支報告書の金額は全く一致しません。なぜなら、後者は基本的に「選挙に直接関わった費用」を計上するためです。後援会活動のためのリーフレットの印刷費用などは、選挙を目的としたものであっても、選挙費用ではありません。事務所にかかった費用も、家賃や光熱水費は日割の7日分、選挙のための改修費用などは全額を選挙費用として計上します。例えば、家賃が8万円/月ですと、選挙費用として計上するのは約2万円、選挙にかかる費用としては8万円ということになります。もっとも、選挙用に事務所を借りると、1ヶ月とかではなかなか貸していただけないので、使わなくても3ヶ月借りたりする必要があり、選挙にかかる費用は増えることとなります。

結局、無投票になっても選挙準備は同じようにしますので、そこにかかる費用は変わりません。変わるのは、6日分の車上運動員、いわゆるウグイスさんの費用や食糧費、広告掲載料くらいでしょうか。印刷物も印刷してしまっているので減らせませんし、むしろ配布できないので余ったものを処分する費用がかかります。選挙カーの費用も、1日分だけというわけにもいかないので同じだけかかります。それなのに選挙公営では1日分の負担となるので、実質候補者には負担増となります。ウグイスさんも普通に手配するとキャンセル不可なので、同じだけ費用がかかる場合もあります。某市長選が無投票になった時(私ではありません)、キャンセルしても7日分まるまる取られたとして、仕事しないのに丸儲けじゃないか!と怒っていた市長もいました。

ということで、感覚的には選挙にかかる費用はほとんど変わらないですね。体力的と精神的な負担は減りますけど。無投票と言われていても、無投票阻止のために立候補する人があれば普通に選挙を戦わなければなりませんし。私の市長選の時も、2人くらい立候補関係書類を取りにきてて、直前まで「出るかも」という話がありました。お隣の某市では、無投票となる告示日当日の17時ぎりぎりに、周りの制止を振り切って提出した候補者があり、バンザイの準備をしていた現職も急遽7日間選挙をすることになった、という事例もあります。突然出てきた相手だから選挙やらなくていい、ということにはなりませんしね。こんな風にバッシングされるほど楽ではないですよ、無投票当選は。尾張旭市議会議員選挙も平成7年は無投票でしたが、皆さんそれぞれに苦労されていたと伺っています。そういったこともちゃんと取材して記事にしていただきたいものです。

あ、もちろん「投票」という仕事が減る分、自治体等の負担はかなり減ります。既に印刷していた投票券などは廃棄するしかないです。投票用紙も持ち帰ったものを次に使えないようにその時限りのものを用意しているはずなので、おそらくは廃棄でしょう。人件費がかからないのが大きいと思います。

民意の問い方、表し方

イギリスがEU離脱で混乱していますが、メイ首相のリーダーシップに疑問を呈し、辞職を迫るような動きもあるようです。私は報道で見ているだけですが、本当に無責任だなあ、と思うことがあります。あの国民投票の結果を受けてだと、誰がやってもこうなった気がしますし、最初から一貫して「国民投票の結果を尊重し、やり直しはしない」と言っているメイ首相は立派だと思います。そもそも、こうなることが分かっていたからだれもキャメロン首相の後をやりたがらなかったわけで、火中の栗を拾われたわけですから。負担金は払いたくないし移民もいらないけど、人の移動の自由と関税なしはそのままで、などという自分のことしか考えていない都合の良い論理が通るはずないですし、通ったらほとんどの国がEUから離脱することでしょう。

先日の18歳選挙権の関係でやらせていただいた「主権者教育」の中でもこのことに触れましたが、要は民意の問い方に問題があったのだと思います。どちらも都合の良いことしか言わなかった、その結果がEU離脱が多数なのだと思います。誰だって負担金は払いたくないし、移民に仕事をとられるのも嫌でしょう。しかし、それとは別にデメリットもあることを伝えないから、そうだそうだ、となるわけです。もう一回国民投票やって逆の結果が出たら、どちらの国民投票結果が有効か?という議論が起こるだけでしょう。意味は無いですし、それくらいの覚悟でやらないとダメですよね。結果が気に入らないから勝つまでやる、なんて国民投票の意味を考えたらおかしな話です。


日本に目を向けてみますと、憲法改正で国民投票という話が出ていますが、各地域では住民投票が実施されています。沖縄県では県民投票が実施され、辺野古基地設置に関して「反対」という意志が示されました。「これが沖縄県民の意志だ」と言われていますが、どういう意志なのか、という点については注意が必要だと私は思います。

この県民投票は「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否」が問われたものです。つまり「普天間飛行場の代替施設のために辺野古を埋立てすることに反対」という意志を示した、ということになります。決して、普天間飛行場か辺野古基地かどちらがいいか?ということを問うたわけではありません。仮にそれが問われたのであれば、多くの沖縄県の人が投票に行かなかったでしょうし、そこに「どちらでもない」という選択肢があれば、ほとんどの方がそれを選ばれたのではないかと思います。結局、これは聞き方の問題であり、辺野古が好きか嫌いか、みたいになってしまっている面があります。沖縄県民の意志はきっと「普天間飛行場も辺野古基地も嫌だ」であり、もっと言えば「沖縄県に米軍関連施設は要らない」なのだと思います。まあ、国防の観点からそういう逃げ場の無くなるような住民投票はしないのだと思いますが。

もう一つ、大阪では一度住民投票で出た「大阪都構想はNO」という民意をひっくり返すための選挙が行われています。しかも、同じ人が再選されて任期が短くなることを避けるため、大阪府知事と大阪市長が逆の選挙に立候補して4年任期を得ようという、前代未聞のやり方で選挙になっています。ある維新の会関係者が「都構想は公約であり、公約を守るためにありとあらゆる手段を取るのは当然のこと」と豪語しているのをみましたが、これは全くの詭弁だと思います。立候補時に都構想「だけ」を公約にしていたのであれば、そう言えるかもしれませんが、きっとそんなことはないでしょう。それ以外の大阪府のこと、大阪市のことも公約したはずです。それらの公約はどうでもいい、と言っているに等しいですよね。だから、私利私欲のためだ、というそしりも受けてしまうわけです。もう一度是非を問う、と言うのであれば、単に出直し選挙に立候補すればいいだけの話で、入れ替えることの説明がつきません。まさに「党ありき」という感じがします。

年度末にあたり

3月末は年度末、ということで基本的に年度単位で事業が進む行政では、いろいろなことの結果が出てきています。旧市民会館の解体・市役所駐車場の整備や文化会館の改修工事、霞ヶ丘線の尾張旭市内部分の開通など、大きな事業も完了を迎え、こうした話題に触れ「さすが!新しい市長はやることが違う。」という方もありました。あえて修正はしませんでしたが。

これらの事業の中で、開通式まで実施した霞ヶ丘線ですが、実は尾張旭市内の部分しか開通しておらず、金城学院大学の方まで通じていない(名古屋市内部分は山の手通線と呼びます)ため「こんな道路、意味無い!」という方もおられたようです。実際、霞ヶ丘地区の方からは「こんな道路そもそも要らなかった」「こんな道路ができるという話は聞いていない」「通過交通が増えるから嫌だ」「全線開通するまで供用開始しないで欲しい」などのご意見をいただいていました。名古屋市側まで通じていないとなればなおさらでしょう。

結果的に全国植樹祭に間に合わなかったので、平子北の市有地が塩漬けで水野市政の失政だと言っている新聞社などからすれば、これも水野市政の失政ということになるのでしょう。平子北地内市有地については全く認める気はありませんが、霞ヶ丘線についてはもう少し良い進め方があったのでは?ということも思っています。

私が市長に就任する前から。都市計画決定がなされ土地の買収や一部工事が進められていた霞ヶ丘線ですが、市道として整備しているので補助金頼りで、その補助金の交付率も悪く、いつになったら完成するのだろう?というような状態でした。それで、土地の買収交渉のスピードを上げつつ、補助金を増やすにはどうしたらいいか?ということを模索し、尾張旭市としては初めて「完了期間宣言路線」として平成30年度での完成を宣言しました。結果的に補助金も増えましたので、これはこれで良かったと考えています。市の負担分も当然増えましたが、集中的に投資して一つづつ終わらせていかないと、先々に行き詰まることもあり得る、と判断してのことです。

ある程度、目処が立った時点で名古屋市側と話をさせていただいたのですが、その後交通安全上の観点から路線の形態が変わったり、説明会で懸念する意見が出たりということで、同時に完成ということが困難になってしまいました。元々、名古屋市側はある程度道が見えており、尾張旭市側の工事が遅れている、という認識でしたので頑張って進めたのですが、名古屋市側との協議のタイミングなど、もう少し何とかすれば良かった、と後悔する部分もありました。

集中的に投資して、尾張旭市側の工事を早く終わらせたがゆえの結果とも言える(その時点では全国植樹祭のぜの字も無かったですし)のですが、政治は結果責任ですので、これはトップの責任と言えるでしょう。災害発生時の輸送路としても重要な幹線道路ですので、今後早い段階での全線開通を願います。



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