元市長の、わたいう

愛知県尾張旭市の水野義則です。市議会議員を4期13年、市長を2期6年9ヶ月務めさせていただきました。地方自治、政治に携わらせていただいておよそ20年、現職でなくなった今だからこそ発信できることがあると思います。「私が言う」ことで、多くの人が何かを考え、何かを感じていただければと思い、引き続き発信していきたいと思います。

政治活動をしていて困ることとは?

政治活動をしていますと、多かれ少なかれ困った場面に遭遇することがあります。その一つに、市民の方から誤解をされ、それを訂正したり、説明したりする機会を得られないこと、があります。

実は先日、私の留守中に自宅にクレームの電話がありました。家族が電話に出たのですが、内容は「ポストにビラが入っていたが、自分の家の敷地に○色の車を停めて若い人が近所と合わせて配布していた、こんな非常識な人の関係者には票は入れたくない」というものだったようです。それが事実であれば謝罪するしかないのですが、実は震災の影響等もあり配布は細々とやっていて、おおむね家族のみです。その中に、○色の車も若い人も心当たりがありません。しかも、その方がお住まいと思われる地域で配布した時間帯と、目撃したとされる時間帯が違います。もっとも、「知人に渡しておいてあげる」とお持ちいただく方が無い訳ではありませんので、そういう方の可能性がゼロではないのですが、そうなりますと近所の何軒かに入れていた、ということと辻褄が合わなくなります。もしかしたら、その車の方は別のものを入れた、あるいは入れようとして、ポストを覗いたときにたまたま私のビラが入っていた、という可能性もあるかな?とは思います。

ただ困るのは、こういう場合相手の方は、お名前や連絡先を教えてはいただけませんので、説明する機会もなく、一方的に悪い感情を持たれたままとなってしまうことです。

以前、私の一般質問を聞いていたという方から、脅迫状めいたはがきをいただいたことがあります。内容は、議場で謝罪して辞職しないとマスコミにばらすぞ、というものでした。その元となった質問ですが、全く誤解されていて、私としては仕組みのまずさを指摘したものでしたが、なぜかそのはがきでは、ある日のトラブルと関連付けられ、一方の取材で事実も確認せず議場で取り上げるとは何事か、というものでした。私はそのトラブルのことを知りませんでしたので、質問しようがないのですが、当然のことながら匿名(アホな市議を辞めさせる会、とか何とか)ですので、そのことを説明しようにもする機会がありません。むしろ「家は知ってるぞ」という意思表示にも考えられ、家族は正直なところ身の危険も感じました。

この件は、私以上に激怒した方が、内容から関わった人を特定し、さらに実際にはがきを書いた人まで特定してくれました。私はお会いはしなかったのですが、その人に私の質問原稿をお渡しし、私の質問の意図を説明していただけるようお願いしました。結局、謝罪の言葉ではなく「あれはエールのつもりで出した」と言われたようで、当時は愕然としました。

また最近では、「市長与党のくせに給食センターの建設に反対しているとんでもない議員」という噂がまことしやかに流れ、公衆の面前で罵倒され、掴み合い寸前になり周りの人に止められたこともありました。本当に突然で、私も「こんにちは」とあいさつをした直後だったので、本当に驚きました。

はがきのケースも罵倒のケースも、こうして何らかの関わりが持てれば、まだ説明する機会はできます。それで信じてもらえるかどうかは別として、自分としては本当のことを話すことができます。問題は、全てその話を聞いた人に説明する機会がないことと、たとえ一番の当事者との間で誤解が解けても、広がった噂の先までその訂正が届いたりはしないことです。

もちろん、こういうことは政治活動以外の場面でも、社会生活を営む上では起こり得ることではあります。しかし、政治の世界は複雑で、他の社会よりはこういうことが起こりやすい構造になっているような気もします。特に選挙が絡むと、ありもしないデマが飛び交うことが少なくありません。実際に「○○は△△で家族を××して逃げてきた」なんて怪文書が出回ったりします。

インターネットもそうですが、噂の中には確かに事実もあります。ただ、その真偽を確かめるのは、その話を受けた人にしかできません。自分で確認をして判断する、ということが求められます。もちろん、私にも当てはまることですが、先入観やイメージだけで判断するのは危険なことがあります。特に選挙に当たっては、マスコミの情報は「参考」に、自分の考えで判断していただきたいな、と思います。

こんないろいろなことがある職業ですが、そんなにおいしい仕事ですかね?(笑)


議員報酬を1,000円減額するか2割減額するか

昨日(3/23)、任期最後の定例会となる3月定例会が閉会となりました。3回目ですが、やはり最初と最後は特別な感慨があります。委員会で不採択となった陳情が、本会議で僅差で採択となったため、急きょ各派代表者会と議会運営委員会を開催することとなり、午前中では終わらず午後までずれ込みました。

傍聴者が11人くらいと多かったのは、おそらく議員報酬の減額についての条例改正案に対する修正案が提出されていたためと思われます。提案理由の説明を受けて質疑があり、原案に対する賛成討論と修正案に対する賛成討論があって、採決の結果、修正案の賛成者は提案者の2人だけ、という結果になりました。

その後の、市長、副市長、教育長の給与に対する減額についての条例改正案でも、修正案こそ出なかったものの、同じような理由で反対討論が行われました。私も議長席で聞いていて悲しくなったのですが、結局のところ、議員の報酬というのは、責任と成果で判断されるもので、財政状況が厳しい状態なので、それ相応の責任を報酬の減額という方法で取るべきだ、ということでした。市長たちの方は給与なので、報酬とは意味合いが違うのですが、自分の考えでは報酬のようなものだから同じく減額で財政状況の責任を取るべき、とのことでした。特別職の責任の取り方って、そんなものなんでしょうか?

一連のやり取りを聞いていたある人が「借金があったら報酬貰ってはいけない、ってことなんですかね?どこまで借金が減ったら貰って良いんですかね?」と感想を言っていました。しかし、一連のやり取りの中では、それは明らかにされませんでした。貯金が20億円、借金が280億円です。4年で約2億円を削ることが、議員としての責任の取り方なのでしょうか?もっと、税金の使い方(使い道ではない)のチェックに力を入れ、必要なところに配分することで責任を果たすのではないのでしょうか?

提案者は、市民の平均給与なら市民の理解を得られると思う、と説明しましたが、その理由は語られませんでした。報酬と給料は違うことは分かっているが、と前置きした上なので、なぜ平均給与なら理解が得られるのか説明しないと、理由にはなりません。仕事が違うなら、平均給与だって貰いすぎかもしれませんし。

奇しくも提案者が、本来であれば議員の仕事を議会基本条例などでちゃんと決めた上で提案すべきだった、それに4年間取り組んでこなかったことは反省している、と述べていました。そこまで分かっていて提出する理由が、改選でもう議場で自分の意見を述べる機会が最後かもしれないから、だとも述べていました。そういう取り組みをしてこなかったことこそ、議員としての責務を果たしていないことであり、確かにそんな議員には報酬は多すぎることでしょう。質疑に立った議員が「あなたたちに言われたくない」と発言した気持ちも分かります。

しかし、市民の目には、2割削減しようと頑張った2人の議員と、たった1,000円しか削減しなかった残りの議員、としか見えないでしょう。仕方のないことですが、前段の議論が何もなく、いきなりこうした議案が出せるのも議会というところであります。定数の1/12の賛同者があればよいので、尾張旭市議会では2人でいろいろなことができます。原案への賛成討論の中で「報酬以上の仕事をして見せる」と述べた議員の気持ち、よく分かります。議員という仕事に誇りを持って取り組みたい、今は強くそう思います。


議員年金制度の廃止①

議員年金制度の廃止が決まり、それに関する法案も示されました。廃止の理由は、国民からの批判が多かったから、というよりは、今のままでは6月に市議会議員・町議会議員の方の共済会が破たん状態、つまり現職議員の掛け金を退職議員への年金給付が上回っているのですが、その分を積立金でもカバーできなくなるから、という理由の方が大きいです。このような状態に陥った理由は、市町村合併が進み掛け金を納める議員の数が大幅に減ったこと、合併の影響分を面倒みると言っていた国が一部しか見なかったこと、などもありますが、そもそも

制度設計に無理があった

というのが大きいと思います。実は、議員年金を廃止、と言っても、すぐにきれいさっぱり無くなる訳ではなく、現在給付を受けているOBの方には、そのまま支給(一部、高額な方のみ減額)されますし、廃止時に権利を有している現職議員(3期12年以上納めた方)は、80%の一時金か、現行制度での年金受給かを選択できることになっています。個人的には、現職議員に年金受給の道を残すのには反対なのですが、とはいえ全員が一時金ということになると、一時的に莫大なお金が必要となることも事実で、積立金の無い共済会としては支払い能力がありませんので、国が支払うということになります。そう考えると、支払いが薄く長く延びる部分があった方が良い面もあります。これがすべて終わるのは60年後くらいだと言われていますが、トータルで見れば現行制度を維持するよりは、国民の負担が少なくて済むと思われます。

それでこの「国が支払う」分ですが、実際は自治体に相応の負担がかかってきます。尾張旭市で1億円くらい、これまでの共済掛金が2千万円にも満たない額でしたので、一気に跳ね上がる計算になります。これに反発して「何で自治体が払わないといけないんだ」と支払い拒否を宣言した首長もあります。これも難しい話で、自治体は共済掛金を14%分(議員は16%)負担していたので、今後何十年・何百年それを支払うことを考えると、一時的に多額の負担をしても、トータルでは少なく済むはずです。しかし、国の施策のツケを回されることには抵抗があるのも仕方ありません。しかし、国の負担と言っても、結局は国民の負担であることに変わりがありません。

私は個人的には以前から廃止派でした。すぐにでも廃止して欲しい、と言ってきました。しかし、廃止するのにもお金が必要だよ、そのお金はどこから出てくるの?ということも言い続けてきました。あるフォーラムの中で質問した時、あるパネラーは「議員からすると、月々引かれる共済掛金が引かれなくなるので、手取りが増える。この分の半分でも回せたら」とお答えになりました。具体的な提案をされた、という意味では評価します。ただ、それは半額になったけど掛け金が続いていることにもなり、制度的にも矛盾を感じます。

一般的に、「廃止」と言うときれいさっぱりなくなることをイメージすると思います。この場合、掛けている方は次から掛金無し、受給している方は次から支給無し、共済会で働いている人は明日から仕事無し、という形になります。関係しない人は「それで良いじゃないか」とおっしゃるかもしれません。しかし、問題は大きく2つあります。1つは財産権の問題です。受給決定した方は、そこで裁定が終わっている、ということになります。それを無しにすることは、憲法上の財産権の侵害になる、という考えがあります。減額ですら難しいと言われ、JALがOBの同意を得られなかったと似ています。これは憲法の解釈の問題になりますので、おそらく支給停止となれば全国で訴訟が起こります。それを受けるだけの力が国にあるか、ということが問題になります。もう1つは、未受給者が掛けてきた掛金を「無し」にしても良いのか、という問題です。任意加入の保険のようなものならまだしも、法律で定められ報酬から源泉徴収されてきた掛金を、破たんしたからといってゼロクリアできるのか、という問題です。これも無かったことにした途端、全国で返還請求が起こると思います。中には「利子は負けてやる。全額返せ」と言っている人もいます。国会議員の例にならった「80%」という数字が妥当なのかどうか、が問われます。

私は、個人的には「ごめん、今までの掛け金はなかったことにして」と言われても良いと思っていました。もっと前から準備して、現職にもOBにも粘り強く話をして同意を取っていく、そういうこまめさがあれば、早めに停止して傷口を広げないようにすることもできたのではないか、と思っています。しかし、もう破たんギリギリのところにきてしまい、そんな余裕も無くなってしまいました。これは国会が、地方議員年金制度について後回しにしてきたツケだと思います。

一時金を選択した場合、平成23年の6月以降の最初の退職時にそれが支払われます。この4月に選挙が行われるところは、その次の選挙、通常ですと平成27年4月ということになります。既に震災の影響でそのままいけるかどうか、という話も出ている中、6月に選挙が行われる自治体の議員で一時金を選択した人が、まずそこそこの掛け金返還分を手にすることになります。神戸市なんかが6月選挙と聞いたきがしますし、県内では刈谷市が7月、小牧市や稲沢市が9月に改選です。一時金を選択すると「被災地に寄付しろ」という声が出るかもしれません。そうなると、今後4年間で制度が変わってしまうかもしれません。

議員にとって、悩ましい選択となることは確かです。

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